【消費税シリーズ 第4回】2割特例・3割特例・簡易課税の違い

消費税

第3回では、インボイス制度の基本を確認しました。免税事業者がインボイス発行事業者になると、原則として消費税の申告・納付が必要になります。第4回では、その負担を軽減するための「2割特例」「3割特例」「簡易課税制度」について、対象者や計算方法、手続きの違いを整理します。

消費税シリーズ
全5回
第1回
|消費税の概要
第2回
|課税事業者・免税事業者とは
第3回
|インボイス制度の基礎知識
第4回
|2割特例・3割特例・簡易課税の違い
第5回
|消費税申告と納付の流れ

通常の消費税申告では、売上に係る消費税額から、仕入れや経費などに係る消費税額を差し引いて納付税額を計算します。これに対し、2割特例・3割特例・簡易課税制度では、実際の仕入れに係る消費税額を一件ずつ集計せず、主に売上げに係る消費税額をもとに納付税額を計算できます。ただし、利用できる事業者や期間、届出の要否がそれぞれ異なります。

▌まずは3つの制度の違いを整理

3つの制度を大まかに比べると、次のようになります。2割特例と3割特例は、インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者となった一定の事業者向けの経過措置です。一方、簡易課税制度は、一定規模以下の課税事業者が選択できる制度です。

制度主な対象納付税額の考え方届出
2割特例インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者となった事業者のうち、一定の要件を満たす方
※個人事業者・法人ともに対象
※令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間が対象。
売上税額の2割事前届出不要
3割特例インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者となった個人事業者のうち、一定の要件を満たす方
※令和9年分・令和10年分が対象 ※法人は適用できない
売上税額の3割事前届出不要
簡易課税基準期間の課税売上高5,000万円以下事業区分別のみなし仕入率で計算原則、事前届出

▌2割特例は「売上税額の2割」を納付

2割特例では、売上に係る消費税額の80%を仕入税額控除の額とみなし、結果として納付税額を課税売上税額の2割とすることができます。

たとえば、売上に係る消費税額が100万円の場合、2割特例を適用すると、

100万円 × 20% = 20万円

となり、納付する消費税額は20万円となります。

対象となるのは、インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者となった方など一定の要件を満たす事業者です。事前の届出は不要で、申告時に適用を選択できます。また、課税期間ごとに適用するかどうかを判断できます。

▌3割特例は個人事業者の令和9年・10年分

令和8年度税制改正により、個人事業者については、2割特例の終了後に「3割特例」が設けられました。令和9年分・令和10年分の消費税申告で、一定の要件を満たす場合、納付税額を売上税額の3割とすることができます。

たとえば、売上に係る消費税額が100万円の場合、3割特例を適用すると、

100万円 × 30% = 30万円

となり、納付する消費税額は30万円となります。

基本的な考え方は2割特例と似ていますが、対象は個人事業者に限られます。こちらも事前の届出は不要です。

また、法人には適用されないので注意が必要です。

▌簡易課税は「みなし仕入率」で計算

簡易課税制度は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者が選択できる制度です。2割特例や3割特例と異なり、インボイス以前から課税事業者だった事業者でも選択できます。

簡易課税制度では、実際の仕入れや経費に係る消費税額を集計する代わりに、売上に係る消費税額に、業種ごとに定められた「みなし仕入率」を掛けて仕入税額控除の額を計算します。みなし仕入率は、事業の種類に応じて40%から90%まで定められています。

事業区分主な事業みなし仕入率
第1種卸売業90%
第2種小売業等80%
第3種製造業・建設業等70%
第4種その他の事業(飲食店業など)60%
第5種サービス業等50%
第6種不動産業40%

※複数の事業を行っている場合は、原則として売上げを事業区分ごとに分けて計算します。区分していない部分には、一定のルールにより低いみなし仕入率が適用されることがあります。

たとえば、第2種事業に該当する小売業で、売上に係る消費税額が100万円の場合、みなし仕入率は80%です。

100万円 × 80% = 80万円(仕入税額控除)

100万円 - 80万円 = 20万円

となり、納付する消費税額は20万円となります。

▌どの方法を選ぶ?一般課税との比較も大切

2割特例・3割特例が使える場合でも、それが必ず最も納付額が少なくなるとは限りません。たとえば簡易課税では、卸売業のみなし仕入率は90%のため、単純計算では納付額は売上税額の1割となります。また、大きな設備投資などで実際の仕入税額が多い場合は、一般課税の方が有利になったり、還付が生じたりすることがあります。事業内容や仕入れの状況を踏まえて比較することが大切です。

▌簡易課税への切替えは届出期限を確認

簡易課税制度を新たに選択する場合は、原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出します。ただし、2割特例・3割特例から簡易課税へ移行する場合には、一定の要件のもと届出期限を延長できる経過措置があります。届出の時期を逃すと希望する計算方法を選べないことがあるため、早めに確認しましょう。次回は、消費税申告と納付の流れを整理します。

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