
銀行や日本政策金融公庫などから事業資金を借りたとき、通帳にはまとまった金額が入金されます。そのため、経理に慣れていない方は「これは売上にするのかな」「返済した金額は全部経費でいいのかな」と迷いやすいところです。
結論からいうと、借りたお金は売上ではありません。また、返済した金額のうち、元本部分は経費ではなく、利息部分だけが経費になります。借入金の仕訳は、この2つを分けて考えると一気にわかりやすくなります。
1. どんな場面で使う仕訳?
借入金の仕訳は、事業の運転資金を借りたとき、設備投資のために融資を受けたとき、毎月の返済が口座から引き落とされたときなどに使います。個人事業主の場合でも、事業のために借りたお金であれば、会計上は「借入金」として管理します。
借入金は、あとで返済する義務のあるお金です。そのため、入金された時点では収入や売上ではなく、「負債」として処理します。一方、返済するときは、借りた元本を返している部分と、金融機関に支払う利息部分に分かれます。
2. 具体例で見る借入金の仕訳
ここでは、次のようなケースで考えます。
- 4月1日に、事業資金として銀行から1,000,000円を借り入れた。
- 5月31日に、返済として55,000円が普通預金から引き落とされた。
- 返済額55,000円の内訳は、元本50,000円、利息5,000円である。
この場合、借入時と返済時では仕訳の意味が変わります。借入時は「普通預金が増えた」一方で「返済義務である借入金も増えた」と考えます。返済時は「借入金が減った」部分と「利息を支払った」部分を分けて処理します。
3. 借入時の仕訳
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 普通預金 | 1,000,000円 | 借入金 | 1,000,000円 |
借方の「普通預金」は、口座にお金が入ったことを表します。貸方の「借入金」は、将来返さなければならない負債が増えたことを表します。ここで売上にしないのが大切です。借入金は、商品やサービスを提供して得た収入ではなく、返済義務のあるお金だからです。
4. 返済時の仕訳
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 借入金 | 50,000円 | 普通預金 | 55,000円 |
| 支払利息(または利子割引料) | 5,000円 |
返済時のポイントは、引き落とされた金額をそのまま全額経費にしないことです。元本50,000円は、借入金という負債を減らす処理です。これに対して、利息5,000円は、事業用資金を借りるために発生した費用なので、経費として処理します。
勘定科目は、会計ソフトや事務所の方針により「支払利息」または「利子割引料」を使います。個人事業主の青色申告決算書・収支内訳書では、事業用資金の借入金の利子などを「利子割引料」として扱う考え方が示されています。
5. なぜ利息だけが経費になるのか
国税庁は、必要経費について「総収入金額を得るために直接要した費用」や「その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用」と説明しています。また、業務用資産の購入のための借入金など、業務のための借入金の利息は必要経費になると示しています。
つまり、借入金の元本は「借りたお金を返しているだけ」なので経費にはなりません。一方、利息は、事業資金を借りるために金融機関へ支払う費用です。そのため、事業に関係する借入であれば、利息部分は必要経費として処理します。
なお、消費税の考え方では、預貯金や貸付金の利子などは非課税取引とされています。課税事業者の場合、利息部分を課税仕入れとして処理しないよう注意が必要です。
6. よくあるミス
借入金の仕訳では、次のようなミスがよくあります。
- 借入金の入金を売上として処理してしまう。
- 毎月の返済額を全額「支払利息」や「経費」にしてしまう。
- 返済予定表を確認せず、元本と利息の内訳を分けていない。
- 利息部分の消費税区分を課税仕入れにしてしまう。
特に多いのは、通帳の引き落とし額だけを見て、返済額を丸ごと経費にしてしまうケースです。借入金の返済は、返済予定表や金融機関の明細を確認し、元本と利息を分けて入力するのが基本です。
また、個人事業主の場合、生活用の借入と事業用の借入が混ざることがあります。国税庁は、家事上と業務上の両方に関わる費用について、業務上必要であることが明らかに区分できる金額に限り必要経費になるとしています。事業用か私用かが混在している場合は、内容を確認してから処理する必要があります。
7. 少し注意したいケース
この記事では、通常の事業用借入金を前提にしています。借換え、保証料、融資手数料、親族からの借入、住宅ローン、事業開始前の借入利息などは、処理が変わることがあります。
また、土地や建物などの固定資産を取得するための借入金利子については、使用開始日までの期間に対応する利子を取得費に含める考え方が国税庁から示されています。通常の返済仕訳とは別に確認が必要になるため、金額が大きい場合や判断に迷う場合は、早めに税理士へ相談しておくと安心です。
8. まとめ
借入金の仕訳は、難しく見えても考え方はシンプルです。借りたときは、入金を売上にせず「借入金」という負債で処理します。返済したときは、元本部分で借入金を減らし、利息部分だけを経費にします。
事業を続けていると、融資、車両購入、設備投資、借換えなど、お金の動きが大きい取引が出てきます。こうした取引は、最初の仕訳を間違えると決算や確定申告にも影響します。通帳・返済予定表・契約書をもとに、元本と利息をきちんと分けて記録しておくことが大切です。
「この返済はどこまで経費にしてよいのか」「事業用と私用が混ざっていて判断が不安」という場合は、自己判断で進める前に、会計処理に慣れた専門家へ確認することをおすすめします。
根拠URL
根拠確認日:2026年6月4日
国税庁 No.2210 必要経費の知識
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
国税庁 確定申告書等作成コーナー よくある質問「利子割引料」
https://www.keisan.nta.go.jp/r7yokuaru_sp/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/rishiwaribikiryo/scid1753.html
国税庁 確定申告書等作成コーナー よくある質問「借入金利子」
https://www.keisan.nta.go.jp/r7yokuaru_sp/socat3/socat33/scid095.html
国税庁 No.6221 預金や貸付金の利子など(消費税)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6221.htm
国税庁 No.3264 借入金の利子が取得費になるとき
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3264.htm
※本記事は、一般的な事業用借入金の会計処理を説明するものです。具体的な税務判断は、契約内容・利用目的・申告区分・消費税の課税状況により異なる場合があります。

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