決算前に慌てない!家賃・保険料・電気代の「前払費用」「未払費用」の仕訳をやさしく解説

税務

経過勘定とは、「いつ払ったか」ではなく「いつの費用か」を整える処理です

個人事業主の方が会計ソフトに入力するとき、「支払った日で経費にすればよい」と考えたくなる場面は多いと思います。毎月の家賃、保険料、電気代などは特にそうです。

ただし、決算や確定申告では、その年の利益を正しく計算するために、支払日だけでなく「その費用がどの期間に対応するものか」を確認する必要があります。この、決算日をまたぐ費用を整理するために使う勘定が「経過勘定」です。今回扱う前払費用と未払費用は、どちらも経過勘定の代表的なものです。

前払費用とは、すでに払ったけれど、まだサービスを受けていない費用です

前払費用は、先にお金を支払っているものの、決算日時点ではまだ役務の提供を受けていない部分をいいます。たとえば、12月に翌年1月分の家賃を支払った場合、12月31日時点ではその家賃はまだ翌年分です。そのため、今年の費用に入れたままにせず、「前払費用」という資産に振り替えます。

国税庁は、前払費用について、一定の契約に基づいて継続的に役務提供を受けるために支出した費用のうち、期末時点でまだ提供を受けていない役務に対応するものと説明しています。つまり、前払費用は「費用の払いすぎ」ではなく、「翌期以降に使う権利」と考えると分かりやすいです。

具体例1:翌月分の家賃を12月中に支払った場合

12月25日に、翌年1月分の事務所家賃100,000円を普通預金から支払ったとします。支払った時点ではいったん地代家賃で処理していても、12月31日の決算では翌年分を今年の費用から外します。

日付・場面借方金額貸方金額
12月25日 支払時地代家賃100,000円普通預金100,000円
12月31日 決算整理前払費用100,000円地代家賃100,000円
翌期 支払対象月に振替地代家賃100,000円前払費用100,000円

この処理をすると、今年の損益計算書には翌年1月分の家賃が残りません。反対に、翌期には前払費用を地代家賃へ戻すことで、正しい期間の費用として計上できます。

具体例2:1年分の保険料をまとめて支払った場合

12月1日に、12か月分の火災保険料24,000円を支払ったとします。保険期間が12月1日から翌年11月30日までであれば、今年分は12月の1か月分だけです。1か月あたり2,000円なので、翌年1月から11月までの11か月分22,000円を前払費用に振り替えます。

日付・場面借方金額貸方金額
12月1日 支払時保険料24,000円普通預金24,000円
12月31日 決算整理前払費用22,000円保険料22,000円

なお、税務上は、1年以内に役務提供を受ける短期前払費用について、一定の要件を満たし継続して処理している場合に、支払時点で必要経費または損金にできる取扱いがあります。ただし、対象や条件があります。本記事では、簿記3級レベルの基本処理として、決算日に未経過分を前払費用へ振り替える方法を説明しています。実務で短期前払費用の取扱いを使うかどうかは、契約内容や毎年の処理方針を確認して判断します。

未払費用とは、まだ払っていないけれど、すでに発生している費用です

未払費用は、決算日時点でまだ支払っていないものの、すでにサービスの提供を受けている費用です。電気代、水道代、通信費、給料、家賃などで出てきます。

国税庁は、必要経費の算入時期について、「その年において債務の確定した金額」と説明しています。支払っていなくても、12月31日までに債務が成立し、具体的な原因が発生し、金額を合理的に算定できる場合は、その年の必要経費になるという考え方です。

具体例3:12月分の電気代を翌年1月に支払う場合

12月分の電気代15,000円について、請求書は届いているものの、支払日は翌年1月20日だったとします。この電気代は12月に事業で電気を使ったことにより発生しているため、12月31日の決算で未払費用として計上します。

日付・場面借方金額貸方金額
12月31日 決算整理水道光熱費15,000円未払費用15,000円
翌年1月20日 支払時未払費用15,000円普通預金15,000円

この仕訳により、今年使った電気代は今年の費用として計上され、翌年に支払ったときは未払費用を消すだけになります。翌年の水道光熱費に二重で入れないことが大切です。

なぜこの処理が必要なのか

経過勘定を使う理由は、利益を正しく計算するためです。たとえば、翌年1月分の家賃を今年の経費にしてしまうと、今年の利益が少なく見えます。逆に、今年12月分の電気代を翌年の経費にしてしまうと、今年の利益が多く見えます。

金額が大きくない場合でも、家賃、保険料、電気代のように毎年発生する費用は、処理方法がぶれると年度ごとの利益比較がしにくくなります。会計ソフトに入力するだけでなく、決算時に「今年分か、翌年分か」を確認することが大切です。

よくあるミス

前払費用・未払費用で多いミスは、次のようなものです。

  • 翌年分の家賃や保険料を、支払った年の経費に入れたままにしている
  • 12月分の電気代や通信費を、翌年に支払ったから翌年の経費にしている
  • 前払費用や未払費用を計上したあと、翌期に戻し忘れて二重計上している
  • 自宅兼事務所の家賃や電気代について、事業用部分と家事部分を分けていない

特に個人事業主の場合、自宅兼事務所の家賃や電気代は、全額が経費になるとは限りません。国税庁は、家事関連費について、業務遂行上直接必要であったことが記録などに基づいて明らかに区分できる金額に限り、必要経費になると説明しています。

まとめ:経過勘定は「決算日に一度立ち止まる」ための仕訳です

前払費用は「払ったけれど、まだ使っていない費用」、未払費用は「まだ払っていないけれど、すでに使った費用」です。どちらも、支払日だけで判断せず、費用がどの期間に対応しているかを整えるために使います。

家賃、保険料、電気代のような身近な支出ほど、処理を間違えても気づきにくいものです。決算や確定申告の前に、請求書・契約書・支払明細を確認し、必要に応じて前払費用や未払費用を計上しておくと、利益の見え方が正しくなります。

経過勘定は簿記の基本論点ですが、実務では短期前払費用の取扱い、自宅兼事務所の按分、会計ソフトでの戻し処理など、判断に迷いやすい点もあります。処理方法に不安がある場合は、早めに税理士事務所へ相談しておくと、確定申告前に慌てずに済みます。

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根拠確認日:2026年6月4日

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